2019-01-13

TYA インクルーシブ・アーツ・フェスティバル ~国際児童青少年舞台芸術フェスティバルの開催



 いよいよです、明日1月14日より、子どもと青少年のための国際演劇フェスティバルが東京・代々木にある国立オリンピック青少年総合センターで始まります。今回のフェスティバルのタイトルはTYAインクルーシブ・アーツ・フェスティバル。

 TYAとはTheatre for Young Audiences の略で、児童青少年のための舞台芸術を指す、世界的に使われている言い方で、インクルーシブ・アーツとはこれもまた世界的に使われている言葉で、「すべての人が鑑賞可能な芸術」を指します。

 つまり今回のフェスティバルは、障がいの有無や文化や人種、そしてセクシャリティーなどの違いによって分け隔てられることなく、誰しもがアーティストとして観客として子どもから大人までが一緒に参加することの出来るフェスティバルなのであります。

 これは日本の児童青少年舞台芸術の分野では初の画期的な試みで、今回のフェスでは特に「障がいと芸術」に焦点を当て、障がいを持ったアーティストが出演する作品から、障がいを持った子どもも鑑賞可能な作品まで、世界そして日本から集めました。

 インクルーシブというのは特に最近使われるようになった表現ですが、僕にとっては幼少の時からごく自然なことでした。僕が通った学校では、各クラスに耳の聴こえない子や、目の見えない子、ダウン症の子や、てんかんの子、脳性麻痺の子や、肢体不自由の子が必ずいました。基本的にはほぼ全ての活動を共にしました。小学校2年の時に、てんかんを持った友人と九九の二の段を放課後特訓したこと、小学校の運動会で行われる全員リレーでクラスメートが目の見えない友人を鈴で先導しながら、前の走者から次の走者へバトンをつなげたこと、演劇も合唱も障がいの有無に関係なくクラス全員で行ったことなど鮮明に覚えています。必要に応じて、手伝うことや待つことを学んだことや、時に計り知れない努力を目にした時に感じる心の動きは、小学生の僕たちの心にしっかり刻まれたのだと思います。それは実践や経験からの学びでかけがえのないものです。

 インクルーシブ、それは「包括的な」を意味する英語です。すべてを包み込む、つまりはすべての存在を認めあうことだと思います。かつて詩人の金子みすずが紡いだ言葉、「みんなちがって、みんないい」と言うことだと思います。しかし今世界に目を向けたとき、包括的な動きよりも分離や分断といった動きの方が目立ち、意見の違うもの、立場の違うものが対立すると言う構造が至るところで見られます。時にその対立が暴力になり、そして差別を生み出す、まさにかつての歴史が繰り返されそうとしています。

 これからの未来を生きて行く子どもたちに渡すべくはそういった世界でしょうか?お互いを憎み合って、自分だけ良ければいい、そういった世の中でしょうか。

 お互いを思いやることができる「包括的」な社会を作るべく、子どものための芸術活動を行なっていく強い意志、そしてそれに伴った行動や活動をすることが我々には必要なのだと思っています。僕はこのフェスティバルもその一環として捉えています。経済を優先する現代社会に於いて、社会的弱者の声はますます聞こえづらくなります。今、舞台芸術が子どもたちのためにできること、障がい者とともにできること、そして多様性豊かな平等かつ平和な未来を築くためにできること。それらの実践こそ今回のフェスティバルが目指すところなのです。

 「みんなちがって、みんないい」

 一人でも多くの様々な可能性を持った、そして個性を持った子どもたちに「舞台芸術」という夢が届きますように。彼らの「想像力」が育まれますように。

フェスティバルの詳細:
https://tyafes-japan.com