「稽古」とは本来、「いにしえを考える」ことだそうである。中国の書経にある言葉で、日本では古事記に「照今」という言葉と共に使われている。つまりは「稽古照今」、過去に思いを巡らせ、今に照らし合わせて考えることとして使われていた言葉なのだろう。
今我々が演劇に於いて「稽古」していることはまさにこういうことなのだろうとつくづく思う。「原理日本」は黒澤明や木下恵介の映画のシナリオを多く手掛けた久板栄二郎氏が1970年に俳優座に書き下ろした、日本の戦前から戦後を描いた戯曲である。きっと1970年の日本を検証するために戦争前後の日本を振り返ったのであろう。ところが、である。2017年にこの戯曲に取り組む僕らは、この戯曲が恐ろしくも日本の未来を描いていることに気づかされているのだ。「今に照らす」どころか未来を照らしているのである。
きっと我々が今最もすべきこと、それは文化や世代を超えて、社会、観客、そして芸術家である自身や同志との、足の引っ張りあいではない建設的な対話を通して、「未来への想像力」をしっかりと養うことだと思う。歴史に学ばない為政者が世界を動かし、恐ろしい未来を築いていく、それはもはや仮定でも仮想でもないのだ。
青年劇場「原理日本」、明日開幕します。
チケットがあるのは17日19時、18日19時、21日19時、23日19時、25日19時の回のみ。
劇場にてお待ちしております。
青年劇場 小劇場企画No.21
「原理日本」
作・久板栄二郎
演出・大谷賢治郎
2017年2月17日(金)~26日(日)
劇場・青年劇場スタジオ結 東京都新宿区新宿2-9-20 メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅徒歩2分
料金・(一般4,500円のところ)関係者割引4,200円 (僕に連絡を!)
U30(30歳以下)3,000円
美術・池田ともゆき 照明・鷲崎淳一郎
音楽・青柳拓次 音響効果・坂口野花
衣裳・宮岡増枝 フィジカルトレーナー&演出助手・原田亮
ドラマトゥルク・広戸聡 宣伝美術・八木克人
舞台監督・松橋秀幸 製作・福島明夫 製作助手・広瀬公乃
出演:
杉本光弘 島本真治 奥原義之 浦吉ゆか 大山秋
矢野貴大 安田遼平 傍島ひとみ 沼田朋樹