2009-08-21

常に初めてやるかのように







芝居の演出をしながら、よく口にすることば。「いつも初めてやるつもりで。」
いま自分が出る芝居の稽古をしているときでもそれを心がけている。

自分の台詞もわかってて、相手の台詞もわかってて、シチュエーションも稽古や本番を重ねて行くに連れて、実際には理解を深めて行くのだけれど、でも舞台上で起きていること、これから起きて行くことは、「次に何が起こるかわからない」状態でいないとだめ。だって今から「どこに連れて行かれるの?」ってシチュエーションのときに、物語を生身で伝えていく俳優は、その「未知」の状態でなければいけないわけです、稽古や本番やって、実際は知ってるにしても。

予定調和では、お客さんだってドキドキしない。でも本番を何度もやっていくと、俳優ってその危険性を常に持っている。「惰性」という危険。

人生と一緒かも。

ゆうべ、お誘いを受け、アメリカから来ているコーラスラインを観てきた。
ミュージカルと言えば、そこに音楽があって、踊りがあって、なのだけれど、コーラスラインの中で、音楽も踊りもない、照明も一本しかない中で、俳優が一人、舞台に立って、オーディションの中で自分の過去について話すシーンがある。コーラスラインって舞台奥の鏡以外はセットもなにもない。黒い空間の中、ひとり、話をする。劇場はオーチャードホール。かなりでかい劇場。大勢の観客の前でぽつんとひとり。

きっと、その俳優もこの芝居を何度も何度もしてきたのだと思う。
そして、観客はその何度も何度も行われてきたその芝居のその一回を観る機会に至る。

そして、その俳優は、まるで初めて自分の秘密を話すかのように話し始めた。
まるで初めて自分の秘密を告白するかのように話を続けた。
最後まで。

その5分間、もしくは10分間、観客が息を止めて聞いているだろう静寂がそこにあった。
座り直したら椅子のひずみが聞こえてしまうだろう、という緊張感が劇場全体にあった、と思う。

俳優、演出、そしてこの作品のもつ、とてつもない力量を感じた。

日本に来る海外のミュージカルって、なかなかここまでは思えない訳ですよ、緊張感と言う意味で。ゆうべは素晴らしいものを観させて頂きました。



先週までは演出の仕事を。来週は自分が舞台に出る番です。

三本足の犬。



















27〜29日、丸の内カフェにて。最終日は既に完売とか。あと2日も残り僅かとか。
よかったら観にきてくださいな。

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