2008-02-13

雪の演出家


栃木まで足を運んできた。新宿から東武鉄道直通の特急に2時間ばかりゆられると雪景色の日光に着く。あまり調べずにふらりと来た旅先、「世界遺産めぐり」というローカルなバスに飛び乗った。
東照宮。着いたとたん雪がしんしんと降り始め、光は白さを増し、音はその静寂さを増し、気が触れそうになるほど美しかった。そして様々な寺社が並び立ち、木々に囲まれたその土地に立っていることがなによりも心地よかった。寒いはずなのに暖かく、視界が雪で閉ざされているはずなのに透明に視野は広がっていった。

日光から鬼怒川へ向かうローカルバスにまた飛び乗った。いつの間にか雪はやみ、太陽が顔を覗かせ始めた。天気予報が当たった。このまま雪が降って雪を見ながらお風呂に入ろうって思っていた矢先。
晴れた鬼怒川に着き、ビールをいただき、外のお風呂へ。星が見える。渓流の音が聞こえてくる。ぼーっと川の対岸を眺めていると星空から雪が降ってきた。静かに一定の速度で降ってくる雪に見入っていると、いつの間にか雪が強くなってきて、いつの間にか吹雪き始めた。右へ左へ下から上から雪が狂乱している。自分が風呂に入っていることも忘れ、完全に雪に没頭していく。光に反射し、超高速で動く妖精のようだった。自然の有り様にトリップしていく感覚を久しぶりに思い出し、自分の存在への意識を完全にかき消して、思考を止め、吹雪く雪の次元を眺めていた。
そして、のぼせた・・・。

風呂からあがると雪はやんでいた。

最高の雪の演出家に出会った。

たまに自然の中に身を置いてみること、日常の意識をリセットして、無意識に在るものがのこのこ出てくる。のこのこ、のこのこ。



朝もう一度お風呂に入った。
太陽がのぼりかけようとしている朝6時30分。
また、雪が降ってきた。静かに静かに降ってきた。

最高の雪の演出家に出会った。

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