2014-06-30

「あやなす」 再構築そして、再演




















久しぶりにブログを見てみると、オトコトバとふたつのつばさの記事でした。時間の流れを感じます。

明日からはもう7月。これまでに蒔いてきた種が、ひとつひとつ花を咲かせようとソワソワし始めています。

まもなく、そのうちの一つが開花宣言をしそうです。そのための水や肥やしを今…

「あやなす」。2012年9月に、劇団銅鑼40周年公演の一つとして上演した作品です。その作品がこのたび、フィリピンのPETAという、児童青少年演劇を行なっている劇場に招聘されまして、僕にとっても、自分が演出した作品としては初の海外公演、単なる再演ではなく、再構築をすることに。もともとこの作品は、あの震災を経て、家族の在り方を模索しようと試みた作品ですが、あれから3年経った今、やはり、あのときのそれとは同じではなく。現在、改めて、3年経った今から、作品を再構築しています。

フィリピンでは、台風を題材にした作品との二本立てで上演されます。その作品も、かつてにあった台風から時を経て、昨年に大きな被害をもたらした台風のあと、再構築された作品だそうです。

再構築とは言ってますが、「再び」ではないのかもしれません。

時はその進みを止めることなく、ぼくらは、かつて起きた出来事を経て、現在や未来の中で、「再び」ではなく、「常に」構築して行かなければならないのかな、と。

従って、再演ではありますが、新作です。

フィリピンに行く前に、劇団わが町本拠地、新百合ケ丘にあるアルテリオ小劇場で1日だけの公演を行います。是非、観に来てくださいませ。














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演出家ノート・大谷賢治郎

2012年に初演した「あやなす」。
震災後、「ことば」を失ったぼくらは
「家族」についての思いを巡らせた。
そして、「あやなす」というコトバに出会う。

ひとの糸は織り交わり、しがらみ、模様を描く。

この作品に台本はない。稽古をしながら、
アイデアを絡ませていく。
ときに折り合いをつけながら、

ぼくらは「家族」を探るための
「ことば」を探した。
それは震災で失った「ことば」を探る作業。

この作品において、口から発せられる「ことば」はない。
きっとぼくらの中には、たくさんの「ことば」にならない
「ことば」があると、思う。

この作品をとおして、みなさんご自身の「ことば」を
見つけて頂けたらと思う。














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そして、この作品のタイトル「あやなす」の名付け親である、僕の友人、川嶋舟さんからのメッセージをここに記載します:

 あの日から早3年がたちました。
午後246分、定刻より少し遅れて運行されていた列車が福島県浜通りの駅に停まっている車内に私はいました。突然の・・・表現しがたい揺れがしばらく続きました。休むことなく繰り返される地震と地響き・・・ 何とも落ち着かない時間が続きました。
しばらくは動くこともできませんでしたが、突然、頭の中に浮かんだ「その場は自分のいる場所ではない」という感覚から同じ車両の人に声をかけ一緒にその場をはなれました。30分後、そこには津波が来ていました。幸いにして、その列車に乗っていた乗客は、非番の警察官の誘導で全員助かったとのことを後から聞きました。
 その時から、いやその前から様々な「(あや)なし」があったのだと思います。いろいろな縁でその時は福島にいました。「あの時」のあと、様々な支援活動を行うこともできたのも「あやなし」があったからでした。震災翌日の朝、公衆電話から連絡が取れた震災直前に今後の日本について話をしていたその方は翌朝には現地に私を迎えいらしていました。その車に乗って東京に戻ってから連絡を取った方々、これは私が存じあげている方だけではなく、知人の知人からというように、実に多くの方々の御協力をいただき自分一人ではとうていできない形で現地に対する顔の見える支援をすることができました。それは、まるで糸が絡み合って人間の生き様を描くことのできる一人一人の人生のキャンバス画のようでした。
 それは、私たちが生きている世界のそのものであることにある時気付きました。
生き物の世界は、食物連鎖のように関係が成り立っていることはよく知られています。実際は、それぞれの関係が複雑に構成され、綾なされ面のようにつまり食物網のようになっています。それと同じようでした。
震災後よく使われている「絆」という言葉も素敵なのですが、もっと多くの人や物が、それぞれに出来ることをして、お互いに必要としているそんな様子が私には「あやなし」ているように感じたのです。一本のつながりが、綾なされて平面となる。私が行うことの出来た支援も普段の生活も、そんなあやなしの中から生み出されているもののではないでしょうか。私は「あやなす」という言葉は、私たちが生きている世界そのものであると思っているだけでなく、震災の支援、復興に必要な考え方であると思っています。
 日ごろの生活で関わりのある人、者、空間それらがあやなされてその人の世界が出来るのです。そして、その人が出来ることは、あやなされている中に自明のものとして見出されるのです。

そんな思いを今回の作品を演出された大谷氏にお伝えしたところ、私の思いを感じ取っていただき、震災翌年の夏に作品にしていただけました。それから2年たち、まだ復興途上にある中で作品がリニューアルされる機会を得られたことはとても感慨深いものです。さらに、フィリピンでの海外公演も決まりましたことにあわせて喜ばしく思います。フィリピンは昨年大きな自然災害を受けました。その翌年に偶然にも作品を共有できる機会を持てることに感謝いたします。あわせて、被害にあわれました方々が一日も早く以前の生活が出来るようになることを心よりお祈り申し上げます。そして、この作品によりフィリピンと日本の新たなあやなしができ、新たな支援のきっかけとなることを切に願っております。

 人は多くの人や物に出会い影響を与え受けながら生きています。そのことを深く教えてくれる作品です。人が謙虚に生きること、助け合うこと、思いやること、そんないろいろな大切な思いをそれぞれに感じとることが出来るのではないでしょうか。
人が人として生きるとは何か そんなことを改めて感じされていただける世界にいざなっていただける作品としていただけた大谷氏に感謝申し上げます。そして、多くの方がこの作品に触れていただき、人として他の人と関わりあいながら生きることの大切さを再度認識していただけると幸いに思います。

○プロフィール
川嶋舟(かわしま・しゅう)
東京農業大学農学部バイオセラピー学科動物介在療法学研究室・准教授。博士(獣医学)・獣医師。生きるにあたり様々な課題を持つ人が、動物を関わり社会参加しやすくなるきっかけを作ることのできるプログラムを行う動物介在療法の実践と普及および教育研究に携わる。特に馬を用いる乗馬療法でアプローチを行っている。多くの人が、社会と関わり生きていくことの出来る社会となることを目指し、動物との関わりから実現することを目指している。

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劇団銅鑼公演

「あやなす」

2014年7月19日 13:00/17:00 
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(小田急線新百合ケ丘駅 徒歩3分)
川崎市麻生区万福寺6-7-1 http://kawasaki-ac.jp/th/

料金 前売3,000円 当日3,500円
チケット 劇団銅鑼 03-3937-1101 info@gekidandora.com
 川崎市アートセンター 窓口にて

作・演出 大谷賢治郎
音楽 Takuji (青柳拓次 from Little Creatures)
照明 鷲崎淳一郎
撮影 一井りょう
宣伝美術 八木克人

出演 古舘一也 原田亮 庄崎真知子 竹内奈緒子 佐藤響子