2018-09-24

「カバンの中の記憶」という名の交響曲

photo by Ryo ICHII
company ma 第4回公演「カバンの中の記憶」は、皆さまのお陰で無事その幕を閉じることができました。観劇してくださったお客様、観劇は叶わぬとも応援してくださった皆さま、心より御礼申し上げます。

今回の公演は、テーマやキーワードを持ち寄って台本のないところから稽古過程の中で作っていくという手法で創造しました。指針になる台本がない作品づくりというのは正直なところ、至難の技です。作品に関わるすべての人の想像力と忍耐力を要します。その作業は一枚の絵を関わる人すべてで描きあげるようなものであり、一つの小説を集団で寄ってたかって書き上げるようなものであり、一つの交響曲をオーケストラ一人一人で作曲するようなものです。トランペット奏者、バイオリン奏者、フルート奏者などがそれぞれ勝手に作曲しては成立しません。それぞれがお互いを尊重し、自分の想像力をフルに使いつつもお互いの声に耳を傾け、最後の最後まで形が見えない創造作業に焦燥感や不安があってもそれに屈することなく、稽古場で誰一人声を荒げることなく、むしろ常に笑い声に溢れ、誰かの指示によって動くのではなく、それぞれがそれぞれに気づいたところを補っていく。むしろこれは奇跡に近い、創造作業です。それをこのキャスト、そしてスタッフでやり遂げました。開幕後は観客の皆さまと一緒に。手前味噌ですが、これは相当レベルの高い、集団的創造作業であり、それをできる面子が揃わない限り、絶対に成立しません。そうなんです、とんでもない面子が揃ったからこそ、実現できた公演なんです。最後の最後までアイデアを出し続け、最後の最後までお互いの声に耳を傾け、キャスト・スタッフ全員で作り上げた「カバンの中の記憶」。

まずはこの場を借りて、この無謀な企画に関わってくださったすべてのキャストそしてスタッフに感謝いたします。千秋楽には観客も舞台に上がり、一枚の絵を描きあげました。作品を一緒に作ってくださったすべての観客、そしてその実現を可能にした劇場に感謝致します。

まさに交響曲、交わり響く曲、シンフォニーを創れたのではとこっそり自負しつつ、再演を夢みております。

ブエノスアイレスにて

company ma 主宰
大谷賢治郎





2018-09-09

いま演劇の仕事をしてて思うこと。



こんばんは。名古屋での演劇ワークショップからの新幹線の帰り道にてこれを書いています。僕のカンパニーは来週の本番に向け、僕抜きで本日自主稽古をしています。

僕は演劇を生業にして生きています。世間的にはなかなか稀有な存在かと思います。どの世界でもきっとそうなんでしょうが、気づくと同業者に囲まれています。それは悪いことではありません。お互いのアイデアや体験を共有したり、交換したりすることができます。

しかし時に陥りやすい傾向は、世の中には同業者以外の人の方がダントツ多いということを忘れてしまうことです。とてもありがたいことに僕は日々演劇の何かに関わった仕事をしています。プロのためのワークショップを行い、子どもや若者とワークショップを行い、国際的な児童青少年演劇の組織の運営に関わり、演劇の大学で教え、演出をし、自分のカンパニーの作品を作り。

演劇に携わる色々な人に出会えば出会うほど、演劇を志す色々な若者に出会えば出会うほど、そして演劇の仕事の幅が広がれば広がるほど、僕ら演劇人の取り組むべきは日常に於いて演劇に触れていない人や社会や生活との繋がりなのではと思うのです。

芸術家同士だけで芸術の必要性を論じてもその哲学は広がっていきません。演劇人の間で社会批判を共有したところでその哲学は広がりません。子どもの時の芸術体験がどれだけ彼らの人間育成に重要かを知っているのはごく僅かな心理学者や社会学者や芸術家だけで、彼らが、我々が劇場や研究室から出て行かない限り、その哲学が広がりを見せることはありません。

すべての人が平等の芸術体験を持てれば良いなと心より思いますが、今の日本で日常の中に芸術や文化が入り込む余裕や精神的豊かさがあるのかどうか問われると正直ないと思います。なくなって来ていると思います。だからこそ、すごく考えます、どうすれば良いのかと。正直答えはなく、探し続けるしかありません。

来週、僕のカンパニーの公演があります。主宰者としては、一人でも多くの子ども、一人でも多くの大人に観てもらえたらと思いながら作品創造をしています。オリンピックのようにスポンサーが付いているわけではございません。その代わりにスポンサーの都合で上演時間や上演内容を決めると言った縛りもありません。笑

記憶をテーマに、僕が今集めることのできる最高のメンバーで作品を作っています。記憶をテーマに、戦争のない未来を作れればという思いで作品を作っています。
明確なストーリーはハッキリ言ってありません。観に来てくれた観客の想像力に委ねます。無責任でごめんなさい。

観てもらうにはチケット代が発生します。勝手に作品作っといて、金とるのかよって話です。そうなんです、日常生活に絶対必要な食料や生活空間、つまりスーパーや商店街やモールや不動産屋で売ってるものには到底叶いません。

僕らがお金をもらって提供しようとしているもの、それは一回きりの体験です。最終的には形としては何も残りません。美術館に足を運ぶ。コンサートやライブに足を運ぶ。映画館に足を運ぶ。劇場に足を運ぶ。その体験の共有にお金を払う。払ってもらう。

とここまで移動中の新幹線で書き綴り。

何が言いたいか。
ひとまず今僕が、僕らが創っている舞台作品を観に来ていただければと思う次第です。

観たいけどお金がって人。お金頂きません。その代わり、野菜でも自分が描いた絵でもなんでも良い、お金の代わりに物々交換できるものを劇場に持って来てください。

観たいけど時間がって人。次の機会に是非。その意思表示だけでも嬉しいです。

観たいしチケット代払う!って人。ご予約お待ちいたしております。

mapro@gol.com 僕のメールに連絡をくださいまし。

公演の詳細は:company-ma.com

2018-09-02

company ma第4回公演「カバンの中の記憶」開幕まであと2週間



 ご無沙汰致しております。いよいよ2週間後に自ら率いるcompany maの第4回公演の本番が迫って来ました。うちらカンパニーでのディバイジング(戯曲のないところから稽古の中でアイデアを持ち寄って作品を作っていく手法)は初演以来であり、しかも今回は出演者が9名ということもあり、稽古場はアイデアに溢れ、本番2週間前にして、ようやくそれらのアイデアを形にし始めているところです。また僕の北京出張や「小さな家」の国内巡演の時期も重なり、今回出演の石川湖太朗くん主宰の桐朋芸術短大の卒業生によるサルメカンパニー旗揚げ公演もあり、それらがそれぞれ有終の美を迎え、いよいよ船上に全員が揃い、幕開けに向け、大きな舵を切り出します。

 幕開けまでの最後の2週間というのは、不安や焦燥感がつきものですが、僕自身、それ以上に未知なる航海へのドキドキやワクワクが優っています(きっと出演者は不安の方が優っているのでしょうが・・・)。ディバイジングの時はいつもそうですが、作っては壊しての繰り返しであり、創っている最中は結果それがどこに着地するのか、もしくはしないのかわからないことも多く、最終的に観客と共有するという目的に向かうアプローチだからこそ、明確な指針や方向性の欠如のような感覚に見舞われることがあります。また点と点を結ぶ線を早く見出したいという焦燥感にも近いものがあると思います。

 ディバイジングは実験的な料理のようなものです。もしくは料理そのものが実験的であることを大前提にするのであれば、ディバイジングは料理そのものです。食材を求め、下ごしらえをし、食材の個性を味見しながら混ぜ合わせ、鍋を選び、皿を選び、どうにか美味しくなることを探求し、どうにかお客さんに美味しく食べてもらうその未知を想像しながら作るその作業はまさにディバイジング。下ごしらえをした様々な食材の小さな集合体が点であり、それらの点を線でつなぎ合わせ一つの料理を完成させる。この最後の2週間というのはまさにその段階だと思います。

 今回の食材は皆引き出しの多いアーティストたち。「記憶と戦争」という大きなテーマの傘の下、彼らと更なる食材集めのために探し求めた「記憶」や「小さな約束」の言葉たち、「当たり前の日常」やそれに対する「後悔」の記憶たち、そして「未知なる未来」に思いを馳せた「過去の夢」の数々と、たくさんの小さな点を創造し、今緩やかに点と点とをつなぎ合わせています。

 子どもに観てもらう舞台芸術作品こそ、最高品質でなければならない。現在、どの国からも聞こえてくる声であり、事実、色々な国でそれが実証されています。子どもの時の芸術体験が、その後の彼らの人生を決めると言っても過言ではないことを世界中が知り始めている、いや再確認しているのです。

 company maの志も然り。一人でも多くの子どもたちへ、一人でも多くの人たちへ、この作品「カバンの中の記憶」が届きますように。皆さんのお越しを劇場にてお待ちいたしております。

 チケットご要望の方は僕に連絡をくださるか、以下リンク先からご予約くださいませ!




company ma 第4回公演
「カバンの中の記憶」

日時:2018年9月15日(土) 17:00
             9月16日(日) 11:00 / 15:00
             9月17日(月) 11:00 / 15:00

会場:川崎市アートセンター アルテリオ小劇場
小田急線新百合ケ丘駅北口より徒歩3分
〒215-0004 神奈川県川崎市麻生区万福寺6-7-1
TEL 044-955-0107  FAX 044-959-2200

構成・演出 大谷賢治郎

出演
大谷恵理子 原田亮 森山蓉子(以上company ma)
庄崎真知子(劇団銅鑼) 片山千穂 勝山優 長原茉穂 石川湖太朗 安達原旭

音楽 青柳拓次
題字 平野甲賀
照明 鷲崎淳一郎(ライティングユニオン)
美術 大谷賢治郎
衣装 大谷恵理子
音響 坂口野花
舞台監督 野口岳大
チラシデザイン 奥秋圭
制作 田事務所・安達原泉
主催 NPO法人 KAWASAKIアーツ http://kawasakiarts.org
提携 川崎市アートセンター
後援 NPO法人 しんゆり・芸術のまちづくり

チケット:全席自由・税込 発売日 2018年7月1日(日)
一般 3,500円 大学生 2,500円 中高生 2,000円 小学生以下 1,000円
3歳以下はひざ上1名無料 当日500円増 団体割引・障害者割引あり

チケット予約:
ウェブ こりっち http://stage.corich.jp/stage_main/75223
メール company ma  tickets@company-ma.com 
電話 NPO法人 KAWASAKIアーツ 044-953-7652 (月〜金 10:00〜18:00)