2014-03-16

「瞬間」岡本太郎・筆


















岡本太郎氏が戦後18年後に執筆した「瞬間」。まさに今の原発に対する日本の状況を語っています。そして、以下その「瞬間」に触発されて創ったシーンです。

劇団わが町「夢見る人」より。

明日まで上演してます。

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劇団員Z (学生に)あなたは「明日の神話」って絵を知ってるかしら?
学生    知ってます、渋谷の駅にある大きな壁画ですよね、確かあれ、原爆のことを
描いてるんですよね。
劇団員C あれは先生が太陽の塔を制作していた同じ時期、1968年から69年にかけてメキシコのホテルのために制作されたものなの。
劇団員D 先生の作品では最大のものらしいわ。
劇団員Z あの絵に描かれているのは
劇団員ニ  1945年8月6日午前8時15分広島にて
劇団員第一グループ 原爆が炸裂する瞬間
劇団員E  8月9日午前11時2分長崎にて
劇団員第一グループ 原爆が炸裂する瞬間
劇団員第二グループ 人が燃え上がる瞬間
劇団員第三グループ 生き物が逃げ纏う瞬間
劇団員第四グループ キノコ雲が立ち上る瞬間
全 員  「明日の神話」が生まれる瞬間


劇団員Z 「瞬間」岡本太郎筆。 
1963年広島に訪れて。8月3日、4日、朝日新聞に掲載。

劇団員Z  原子雲を見た広島の人の、素朴な言葉--------あの時、大きな雲がむくむくあが
って、その両脇へ金屏風拡げるように、何ともいえぬ綺麗な雲が拡がってゆくんです。あの赤とも黄ともいえぬ綺麗な雲は何ともいえん綺麗でしたよ。広島の上へ大きな扇を拡げるように順々に拡がって行きましたよ。快晴の空に、キチンと線を引いたように切れ、それが……(蜂谷道彦『ヒロシマ日記』より)

劇団員A 誇らしい、猛烈なエネルギーの爆発。夢幻のような美しさ。だがその時、逆に、同じ力でその直下に、不幸と屈辱が真黒くえぐられた。誇りと悲惨の極限的表情だ。
劇団員へ あの瞬間は、象徴としてわれわれの肉体のうちにヤキツイている。過去の事件
としてではなく、純粋に、激しく、あの瞬間はわれわれの中に爆発しつづけている。瞬間が爆発しているのである。
劇団員B 原爆が美しく、残酷なら、それに対応し、のりこえて新たに切りひらく運命、
そのエネルギーはそれだけで猛烈で、新鮮でなければならない。でなければ原爆はただの災難だった、落されっぱなし、ということになってしまう。
劇団員C その点でわれわれの日本人は広島を直視しなければならないのだ。現実はどう
なっているだろうか。あの日から十八年目、私のふれた広島の町は、あまりにも散文的で、何のあともとどめないようだった。
劇団員D この市自慢の百メートル道路を行く。公園のように作られているが、生えほう
だいの雑草とゴミで、ほこりっぽい。投げやりの感じである。
劇団員M 爆心地が「平和公園」になっている。「へいわ」なんて、形式的な、お飾りのような名のつけ方だ。そういえば「平和マンジュウ」というのも売っている。
劇団員ニ この近辺には例によって観光バスが、ドテラを着込んだような格好をならべて
止っている。団体がぞろぞろ慰霊碑の前に行き、拝んだり、記念撮影したりしている。
劇団員Q その気分はまったくお墓参りか、浅草の観音さまなどを思わせる。手を合わせ
て拝んだあと、みんな、ホっとした、いい顔になる。……やっと見るものは見たし、拝むものは拝んだ。自分はこんな災難にもあわなかったし、今さらながらの安堵感。敬虔と狡猾さが入りまじったような表情だ。そしてまたぞろぞろ観光バスに引上げて行く。
劇団員V 何というニブサだろう。ナンセンスだ。明らかに筋がすりかわっている。
劇団員ハ 死んだ人はたしかに傷ましい。しかし原爆と、それとは別である。現在爆発し
つづけている問題、それを、ここにくる一人一人が自分のこととして確かめ、そして爆発しつづけることが本来なのだ。過去の思い出にとどまることではないのである。
劇団員U ズレはまだある。平和および平和運動の問題もそうだ。
劇団員イ 二十二年ごろから、原爆の落ちた日の行事を「平和記念式典」と名のっている。爆心地を「平和公園」とよぶのと同じスリカエだ。八月六日を思い出にとどめたいのなら、原爆、あるいは被曝記念日といった方が正しい。
劇団員E いったい、忘れようとするのか、絶対に忘れず、かきたて、思いおこし、再び
現実に働きかけようと意志するのか。中途半端だ。広島が「平和運動の貸座敷」などと、悪口をいわれるゆえんだ。
劇団員K 平和運動はあの激しい現実をみつめたところから始る。それは戦争よりもっと
積極的に、強烈に闘いとるものなのだ。
劇団員F この町も、ここに集る人も、平和・平和とお題目に泳いでしまっているのではないか。あのあまりにも美しく、あまりにも不吉な現代の象徴に、惰性のムードやごまかしではなく、猛烈な自覚と情熱で、純粋に対決しなければならない。
劇団員P「安らかに眠って下さい。過ちは繰返しませぬから」と慰霊碑に刻んである。
劇団員Q ここには主格がない。だれが過ちを犯し、それを過ちと認め、だれの責任にお
いて繰返しませんと誓っているのか。
劇団員ロ Weという主語が省略されているのだ。しかし、ではそのわれわれとはだれなの
か。やっぱり責任の所在がいない。おかしな誓いだ。
劇団員I 気分だけ、感傷だけの、つまり美文にすぎない。かつて「一億一心火の玉だ」「総ザンゲ」などと、空しい言葉をふりまわしたが、だれも責任をとらなかった。あれを性コリもなく、まだやっている。
劇団員A「過ち」は過去のことだ。「繰返しませぬ」というのは未来である。だがここに象徴的に、現在が欠けている。
劇団員L 現在、責任をとらなければ、過去も未来もヘッタクレもありはしない。
劇団員C とかく、過去の非をあやまり、未来を約す。そんなのが奇妙にホロリとさせ、
効果をもつのだ。ただ今こうであると誇り、生身で責任をとる、そういう強いモラルはうち出さない。
劇団員ト 謙虚なのか、狡猾なのか、あるいは無知なのか。こんなポーズが現代世界に通
じるはずはない。
劇団員O この碑では時間の現在が不在であり、「平和」では自分の立つ位置が明らかでない。空間的主体の欠落である。
劇団員J 時・空においておのれが象徴的にぬけている。
劇団員Ⅹ 今日の広島に原爆の痕跡はほとんど見られない。有名な石段にヤキツケられた
人影は消えかかっているし。
劇団員N 「被爆者」は原爆病院やその他の施設を中心とした一郭に、ひっそりとかたま
っている。
劇団員B 八月六日が近づいたり、何か関連したニュースがある時は、慰問客、それにジ
ャーナリストがつめかける。
劇団員チ 季節もので、“初夏の風物詩”などと金魚売りを、“湘南の何万人”と海水浴客が追っかけるのと同じ気安さで、“被爆者の声”をキャッチするのである。
劇団員W ここでまた「被爆」の本質的意味が不明になっているのである。
劇団員へ 傷害を受けた人だけが被爆者なのだろうか。この原爆の事実から、われわれの
運命の大きな部分が出発している。
劇団員Z つまりわれわれ自身が被爆者なのだ。それなのに、他人事のようにケロッとして見物側にまわっている。
劇団員ニ キノコ雲も見なかったし、火傷もしなかった、そして現在、生活をたくましく
うち出し、新しい日本の現実を作りあげる情熱と力をもった日本人、その生きる意志の中にこそ、あの瞬間が爆発しつづけなければならないのだ。
劇団員X 広島は舞台であり、そこでみんなが原爆の名で躍る。異様なコメディー。
劇団員L この象徴的な土地に、碑や祭壇なんかもうけて、拝んだり、記念したりするか
ら問題がズレるのだ。
劇団員P、Q、私なら爆心地に、何もない、空の空間を作る。作るべきだ。
劇団員R、S ……たとえば白砂だけの、なんにもないひろがり。
劇団員G それはあの瞬間に、ごっそり、えぐりとられた象徴でもある。
ガア公 そしてあの爆発とは何かを、空に向かって一人一人が
全 員 問い、考え、自分自身を再認識する場所にするのである。



学 生 明日の神話。あのときの明日は「今」。その今を私、いや私たちが生きている。
劇団員Q 何十年前に「明日」って言ってたってことは、それって「今」だよね。
劇団員P 昔の人が言ってた未来は、私たちが生きてる「今」ってことだよね。
女性グループ  「安らかに眠って下さい。過ちは繰返しませぬから」
劇団員F 誰が?
グループ1 私たちが?
グループ2 あなたたちが?
劇団員P 誰が?
劇団員E 2011年3月11日午後2時46分
劇団員ハ 東日本大震災。
劇団員O 3月12日
劇団員D 13日、14日、15日、16日・・・
劇団員P 原発事故?
学 生  原爆?
劇団員ト いいえ、原発。
学 生  原発。
劇団員ニ 過ちは繰り返しませぬから。…誰が?
男性全員 誰が?
劇団員M 責任の所在は…誰に?
女性全員 誰に?

劇団員ヘ …「明日の神話」は
男性全員 もう明日でもなく。
全 員 神話でもなく。

間。

学 生  あの人は日本を変える夢を見ていたんだ。
ガア公  あの人はもしかしたら日本の未来を変える夢を見ていたのかもしれません。
学 生  その未来が「今」。
ガア公  そしてその「今」を生きているあなたたちが次の「未来」を作るの。
学 生  ということは、「過ちは繰り返しませぬから」の主語は私。
ガア公  まずはあなたの「わが町」から始めてみたら如何でしょう? そうすれば沢山
の「私」が集まって、
学 生  主語は「私たち」になる。

2014-03-13

「夢見る人」いよいよ明日から














一昨年、川崎・新百合ケ丘にて立ち上げた市民劇団「わが町」。その劇団がたくましく成長している。

川崎にゆかりある画家・岡本太郎の物語を芝居にしようと演出家・劇作家のふじたあさや氏とアイデアを分かち合ったのが約1年前。岡本氏が書いた本を読み漁っていた。
そして、9月から週1回のペースでワークショップを開始。今回のアイデアの一つでもあった、「劇団員と共に創る」試みを実践した。みんなで彼の本を読みながら、インスピレーションを受けたコトバを抽出し、そこからシーンを創ったり、エピソードを抽出し、そこからシーンを創ったり、彼の文章をポエトリーとして捉え、群読をしたり。あれやこれや。そのうち、団員の中から数名の劇作家が現れ、ワークショップで創られたシーンが台本化され持ちこまれ、次から次に発表されて行くという創造過程。自主的かつ自発的に。

明日から上演の始まる「夢見る人」はその集大成である。劇団員が創ったものとふじた氏と僕のアイデアも織り交ぜ、頼もしいスタッフの皆さんと共に壮大なコラージュによる演劇的散文詩が生まれつつある。セット、音楽、衣裳、照明が劇団員の創造を盛り上げて行く最終過程は演劇を創る人間としての至福のときである。

新宿から小田急線でたったの20分。新百合ケ丘・アルテリオ小劇場。4歳から74歳の劇団員たちと一緒に劇場でお待ちしております。

きっと「こんな市民劇の形もあるのか」と思ってもらえるはずです。
少しでも多くの人に観に来てほしいと切に願います。

以下公演詳細:

劇団わが町公演
「夢見る人」

川崎市アートセンター
アルテリオ小劇場

小田急線「新百合ヶ丘駅」北口より徒歩3分

〒215-0004 神奈川県川崎市麻生区万福寺6-7-1
Tel. 044-955-0107
Fax. 044-959-2200

http://kawasaki-ac.jp/th/theater/detail.php?id=000063 

公演日時 3月14日(金)19:00
3月15日(土)14:00/18:00
3月16日(日)13:00/17:00
※開演は開場の30分前
チケット 全席自由:一般2,500円/小学生1,000円


■取扱い先
【TEL】044-959-2255(9:30〜19:30/土日祝・休館日除く)
【WEB】 チケット購入はこちらから
http://kawasaki-ac.jp/ 

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最後に演出ふじたあさや氏からのメッセージ:

太郎さんの夢は私たちの夢! 川崎が生んだ稀代のアーティスト・岡本太郎の足跡を追って<劇団わが町>の冒険!
「劇団わが町」の夢 ふじたあさや

新百合ヶ丘で、今ちょっとした異変が起きている。一年前に『わが町しんゆり』で旗揚げしたばかりの<劇団わが町>が早くも変貌しようとしているのだ。<劇団わが町>の次回作は、川崎の生んだ芸術家・岡本太郎さんを劇化したいと思っている劇団の話である。そこで、「だからみんなで岡本太郎さんの作品を観て、本を読みましょう。そして、太郎さんの言葉を自分の生活に当てはめて、どんな場面にしたらいいか、考えてみましょう」と呼びかけた。それからがすごかった。毎週毎週、自主的に作られたシーンが、台本化されて持ち込まれる。それを自主的に練習して場面化する。反応を見ながら次の週には手直しがほどこされる。まさに「こういう劇団を舞台にのせたい」と思っている通りの劇団に、<劇団わが町>は、日に日に進化を遂げ始めた。みんな岡本太郎さんに触発されたのである。みんなをこんなところまで連れて行ってしまうのだから、岡本太郎さんはすごい。着地点がどこになるのか、まだ何とも言えないが、少なくとも、岡本太郎さんがみんなの中に根を下ろして、血になり肉になって行く有様は、見ていただけそうだ。『夢みる人』を追う中で、<劇団わが町>も夢みる劇団になろうとしているのだ。

2014-03-07

ドラマリーディング 森本薫を読む




















日本演出者協会主催「日本の近代戯曲研修セミナー」に約このひと月参加しておりまして、その研修結果として、リーディングを行ないます。昨年、青年劇場で森本薫の「怒濤」の創造に関わり、自分の日本の近代演劇に対する無知を痛感、今回の企画の話しを聞き、すぐさま挙手した次第でありまして…

気づいたら、リーディングに出演させて頂くことに。

森本薫。

日本が誇る劇作家です。

是非、リーディングを聴きに来てください。


予約は僕に連絡をくださるか、こちらのサイトにて:
https://ticket.corich.jp/apply/52659/


演出をしてくださってる矢野靖人氏のコメントはこちらから:
http://theatre-shelf.org/diarypro/archives/1123.html

劇団わが町の本番直前ではございますが、稽古の合間を縫って参加させて頂きます。


会場:「劇」小劇場 東京都世田谷区北沢2-6-6(小田急線/井の頭線「下北沢」駅南口から徒歩3分)


日時:  2014年3月10(月)~11日(火)
開演:  19:00

出演:
『薔薇』、大谷賢治郎、川口優子(shelf)、小林拓生、春日茉衣(shelf)、『記念』
『記念』
(3/10)青井陽治、川渕優子(shelf)(3/11)林英樹、千賀ゆう子
『生れた土地』、由布木一平、沢柳迪子、秋葉舞滝子、林英樹
脚本: 森本薫
演出: 矢野靖人(shelf)(『薔薇』、『記念』)

須藤黄英(劇団青年座)(『生れた土地』)

料金
学生(前売、当日共) 1,000円
一般(前売、当日共) 2,000円
※チケットの半券をお持ちの方はシンポジウムは両日ともご参加いただけます。


お問合せ: 一般社団法人日本演出者協会(担当:川口)
03-5909-3074  /  090-1016-7092
kindaigikyoku@yahoo.co.jp

サイト
http://jda.jp/seminar03.html
※正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

タイムテーブル 3月10日(月)
19:00〜 ドラマ・リーディング 『薔薇』、『記念』、『生れた土地』
20:20〜 シンポジウム 「森本薫における『恋愛』とその現在性」
パネラー: 高石宏輔 (カリスマナンパ師/カウンセラー)


3月11日(火)
19:00〜 ドラマ・リーディング 『薔薇』、『記念』、『生れた土地』
20:20〜 シンポジウム 「日本近代演劇における森本薫」
パネラー:: 大笹吉雄(演劇評論家)

2014-03-05

劇団わが町「夢見る人」

めちゃくちゃ久しぶりにブログを書きます。

2年前から始動した、川崎・新百合ヶ丘の市民劇団「わが町」と共にとんでもない挑戦に挑んでいます。
画家・岡本太郎氏を題材に約半年間ワークショップを重ね、即興や様々なシーン作りを繰り返しながら、劇団員みんなで一つの作品を創っています。タイトルは「夢見る人」。タイトルが物語るのは、岡本氏にインスピレーションを受け、この作品を創る過程にいる劇団員ひとりひとり。色々なアイデアは去ることながら、岡本氏のことばに触発された劇団員たちがことばを紡いだシーンも織り交ぜ、演出のふじたあさや氏と僕と劇団員たちと構成。タイトルに相応しい不思議な作品になりつつあります。上演台本が仕上がったのも、つい先週。で、本番は来週!

稽古は佳境どころか、むしろ創造過程のど真ん中。で、本番は来週!

はい、未だ夢見ている最中なのであります。

不思議だけれど、トゲのある演劇のコラージュ。
是非遊びに来てください。

劇団わが町公演
「夢見る人」

川崎市アートセンター
アルテリオ小劇場

小田急線「新百合ヶ丘駅」北口より徒歩3分

〒215-0004 神奈川県川崎市麻生区万福寺6-7-1
Tel. 044-955-0107
Fax. 044-959-2200

http://kawasaki-ac.jp/th/theater/detail.php?id=000063

公演日時 3月14日(金)19:00
3月15日(土)14:00/18:00
3月16日(日)13:00/17:00
※開演は開場の30分前
チケット 全席自由:一般2,500円/小学生1,000円


■取扱い先
【TEL】044-959-2255(9:30〜19:30/土日祝・休館日除く)
【WEB】 チケット購入はこちらから
http://kawasaki-ac.jp/
【窓口】9:30〜19:30(休館日除く)